賃貸住宅管理業者の業務

業務処理の原則

賃貸住宅管理業者は、信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならないとされています。

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」

賃貸住宅管理業者は、賃貸住宅管理業の専門家として、専門的知識をもって適切に管理業務を行うとともに、賃貸住宅の賃貸人が安心して管理業務を委託することができる環境を整備することが必要である。このため、賃貸住宅管理業者は、常に賃貸住宅のオーナーや入居者等の視点に立ち、業務に誠実に従事することで、紛争等を防止するとともに、賃貸借契約の更新に係る業務、契約の管理に関する業務、入居者への対応に関する業務のうち法第2条第2項第1号の「維持保全」には含まれないものなど、法第2条第2項に定める業務以外の賃貸住宅の管理に関する業務を含め、賃貸住宅管理業の円滑な業務の遂行を図る必要があるものとする。

名義貸しの禁止

賃貸住宅管理業者は、自己の名義をもって、他人に賃貸住宅管理業を営ませてはなりません。

罰則

名義貸しにより他人に賃貸住宅管理業を営ませたときは、違反した者に対し、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれの併科という罰則があります。

管理受託契約の締結前の書面の交付

賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結しようとするときは、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人(賃貸住宅管理業者である者その他の管理業務に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるものを除く。)に対し、当該管理受託契約を締結するまでに、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明する必要があります。

説明すべき事項

  1. 管理受託契約を締結する賃貸住宅管理業者の商号、名称又は氏名並びに登録年月日及び登録番号
  2. 管理業務の対象となる賃貸住宅
  3. 管理業務の内容及び実施方法
  4. 報酬の額並びにその支払いの時期及び方法
  5. ⅳの報酬に含まれていない管理業務に関する費用であって、賃貸住宅管理業者が通常必要とするもの
  6. 管理業務の一部の再委託に関する事項
  7. 責任及び免責に関する事項
  8. 委託者への定期報告に関する事項
  9. 契約期間に関する事項
  10. 賃貸住宅の入居者に対するⅲに掲げる事項の周知に関する事項
  11. 管理受託契約の更新及び解除に関する事項
「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」

法第13条に基づく説明(以下「管理受託契約重要事項説明」という。)は、業務管理者によって行われることは必ずしも必要ないが、業務管理者の管理及び監督の下に行われる必要があり、また、業務管理者又は一定の実務経験を有する者など専門的な知識及び経験を有する者によって行われることが望ましい。なお、管理受託契約重要事項説明は、賃貸人から委託を受けようとする賃貸住宅管理業者自らが行う必要があることに留意すること。

管理受託契約重要事項説明については、賃貸人が契約内容を十分に理解した上で契約を締結できるよう、説明から契約締結までに1週間程度の期間をおくことが望ましい。説明から契約締結までの期間を短くせざるを得ない場合には、事前に管理受託契約重要事項説明書等を送付し、その送付から一定期間後に、説明を実施するなどして、管理受託契約を委託しようとする者が契約締結の判断を行うまでに十分な時間をとることが望ましい。

書面交付及び説明が不要な場合

管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人が以下に該当する場合には、書面交付及び説明は不要です。

  1. 賃貸住宅管理業者
  2. 特定転貸事業者
  3. 宅地建物取引業者(宅地建物取引業者とみなされる信託会社、信託銀行、登録投資法人及び特例事業者を含む。)
  4. 特定目的会社
  5. 組合
  6. 賃貸住宅に係る信託の受託者(委託者等がⅰ~ⅳのいずれかに該当する場合に限る。)
  7. 独立行政法人都市再生機構
  8. 地方住宅供給公社

電磁的方法による提供

賃貸住宅管理業者は、上記の書面の交付に代えて、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができます。この場合において、当該賃貸住宅管理業者は、当該書面を交付したものとみなされます。

管理受託契約の締結時の書面の交付

賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結したときは、管理業務を委託する賃貸住宅の賃貸人(以下「委託者」という。)に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付する必要があります。

書面に記載すべき事項

  1. 管理業務の対象となる賃貸住宅
  2. 管理業務の実施方法
  3. 契約期間に関する事項
  4. 報酬に関する事項(報酬の額並びにその支払の時期及び方法を含む。)
  5. 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
  6. 管理受託契約を締結する賃貸住宅管理業者の商号、名称又は氏名並びに登録年月日及び登録番号
  7. 管理業務の内容
  8. 管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、その内容
  9. 責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容
  10. 委託者への定期報告に関する事項
  11. 賃貸住宅の入居者に対する周知に関する事項
「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」

法第14条第1項各号規定の事項及び規則第35条各号規定の事項が記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができるものとする。

電磁的方法による提供

上記の書面についても、賃貸住宅の賃貸人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができます。この場合において、当該賃貸住宅管理業者は、当該書面を交付したものとみなされます。

管理業務の再委託の禁止

賃貸住宅管理業者は、委託者から委託を受けた管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはならないとされています。

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」

管理受託契約に管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、一部の再委託を行うことができるが、自らで再委託先の指導監督を行わず、全てについて他者に再委託すること、又は、管理業務を複数の者に分割して再委託して自ら管理業務を一切行わないことは、本条に違反する。

再委託先は賃貸住宅管理業者である必要はないが、賃貸住宅の賃貸人と管理受託契約を締結した賃貸住宅管理業者が再委託先の業務の実施について責任を負うこととなる。このため、法第6条各号(第11号を除く。)の登録拒否要件に該当しない事業者に再委託することが望ましく、また、再委託期間中は、賃貸住宅管理業者が責任をもって再委託先の指導監督を行うことが必要である。なお、契約によらずに管理業務を自らの名義で他者に行わせる場合には、名義貸しに該当する場合があるため、再委託は契約を締結して行うことが必要である。

分別管理

賃貸住宅管理業者は、管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を、整然と管理する方法(家賃等を受領する口座を自己の固有財産を管理するための口座と明確に区分し、かつ、当該金銭がいずれの管理受託契約に基づく管理業務に係るものであるかが自己の帳簿により直ちには別できる状態で管理する方法)により、自己の固有財産及び他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭と分別して管理しなければならないとされています。

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」

管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭(以下「家賃等」という。)を管理する口座と賃貸住宅管理業者の固有財産を管理する口座を別とした上で、管理受託契約毎に金銭の出入を区別した帳簿を作成する等により勘定上も分別管理する必要がある。

なお、家賃等を管理する口座と賃貸住宅管理業者の固有財産を管理する口座の分別については、少なくとも家賃等を管理する口座を同一口座として賃貸住宅管理業者の固有財産を管理する口座と分別すれば足りる。

また、家賃等を管理する口座にその月分の家賃をいったん全額預入し、当該口座から賃貸住宅管理業者の固有財産を管理する口座に管理報酬分の金額を移し替える等、家賃等を管理する口座と賃貸住宅管理業者の固有財産を管理する口座のいずれか一方に家賃等及び賃貸住宅管理業者の固有財産が同時に預入されている状態が生じることは差し支えないが、この場合においては、家賃等又は賃貸住宅管理業者の固有財産を速やかに家賃等を管理する口座又は賃貸住宅管理業者の固有財産を管理する口座に移し替えることとする。ただし、賃貸人に家賃等を確実に引き渡すことを目的として、適切な範囲において、管理業者の固有財産のうちの一定額を家賃等を管理する口座に残しておくことは差し支えない。

証明書の携帯等

賃貸住宅管理業者は、その業務に従事する使用人その他の従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはなりません。
賃貸住宅管理業者の使用人その他の従業者は、その業務を行うに際し、委託者その他の関係者から請求があったときは、上記の証明書を提示しなければなりません。

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」

従業者であることを表示する方法は証明書による方法に統一することとする。この従業者証明書を携帯させるべき者の範囲は、賃貸住宅管理業者の責任の下に、当該賃貸住宅管理業者が営む賃貸住宅管理業に従事する者とする。なお、賃貸住宅管理業者と直接の雇用関係にある者であっても、内部管理事務に限って従事する者は、従業者証明書の携帯の義務はない。また、単に一時的に業務に従事するものに携帯させる証明書の有効期間については、他の者と異なり、業務に従事する期間に限って発行することとする。

帳簿の備付け等

賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え付け、委託者ごとに管理受託契約について契約年月日その他の国土交通省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならないとされています。

帳簿の記載事項

  1. 管理受託契約を締結した委託者の商号、名称又は氏名
  2. 管理受託契約を締結した年月日
  3. 契約の対象となる賃貸住宅
  4. 受託した管理業務の内容
  5. 報酬の額
  6. 管理受託契約における特約その他参考となる事項

電磁的方法による帳簿の作成・保存

上記に掲げる事項が、電子計算機に備えられたファイルまたは磁気ディスク等に記載され、必要に応じ賃貸住宅管理業者の営業所又は事務所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは、当該記録をもって帳簿への記載に代えることができます。

保存期間

賃貸住宅管理業者は、帳簿を各事業年度の末日をもって閉鎖するものとし、閉鎖後5年間当該帳簿を保存しなければならないとされています。

標識の掲示

賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める様式の標識を掲げる必要があります。

委託者への定期報告

賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況その他の国土交通省令で定める事項について、国土交通省令で定めるところにより、定期的に、委託者に報告する必要があります。

上記の報告を行う際には、管理受託契約を締結した日から1年を超えない期間ごとに、及び管理受託契約の期間の満了後遅滞なく、当該期間における管理受託契約に係る管理業務の状況について、下記の事項を記載した管理業務報告書を作成し、これを委託者に交付して説明しなければならないとされています。

記載事項

  1. 報告の対象となる期間
  2. 管理業務の実施状況
  3. 管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況及び対応状況
「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」

(1)「管理業務の実施状況」について(第2号関係) 本号で規定する「管理業務」については、法第2条第2項に基づく管理業務に限らず、賃貸人と賃貸住宅管理業者が締結する管理受託契約における委託業務の全てについて報告することが望ましい。

(2)「管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況及び対応状況」について(第3号関係) 苦情の発生した日時、苦情を申し出た者の属性、苦情内容、苦情への対応状況等について、把握可能な限り記録し、報告する必要がある。単純な問い合わせについて、記録及び報告の義務はないが、苦情を伴う問合せについては、記録し、対処状況も含めて報告する必要がある。

電磁的方法による提供

管理業務報告書についても、賃貸住宅の賃貸人の承諾を得て、管理業務報告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができます。この場合において、当該賃貸住宅管理業者は管理業務報告書を交付したものとみなされます。

秘密を守る義務

賃貸住宅管理業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。賃貸住宅管理業を営まなくなった後においても、同様です。

賃貸住宅管理業者の代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、賃貸住宅管理業の業務を補助したことについて知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。賃貸住宅管理業者の代理人、使用人その他の従業者でなくなった後においても、同様です。

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