不動産特定共同事業者に対する行政処分事例

令和6年(2024年)6月、当局から不動産特定共同事業者に対する行政処分がなされました。
今回は当該処分事例の内容をご紹介いたします。
(処分については当局から内容が公表されていますが、本コラムにおいては事業者名等は伏せさせて頂きます。)

処分内容

不動産特定共同事業に係る業務の一部停止30日間及び指示

事実関係(処分の理由)

(1)開発許可対象地ではない土地を対象不動産に含んでいた

  • 開発許可の対象ではない土地を対象不動産に含んでいるにもかかわらず、対象不動産について開発許可済であると契約成立前交付書面及び契約成立時交付書面に事実と異なる記載をした。このことは、法第24条第1項、施行規則第43条第1項第17号ロ、法第25条第1項に違反する。
  • 事実と異なる記載をした契約成立前交付書面及び契約成立時交付書面を用いて販売を行ったことは、取引の公正を害する行為であることから、法第34条第1項第2号に該当する。
  • 対象不動産の誤りを是正するため開発許可を得た他の土地との交換処理を行った際に、事業参加者から契約変更の同意を得る必要があるにもかかわらず、事業参加者から申出がない場合、契約に同意したものとみなすこととした。このことは、契約の変更手続きとして不適切であり取引の公正を害する行為であることから、法第34条第1項第2号に違反する。

    (2)事業計画の変更について説明が不十分であった

    • 開発事業プラン変更後の対象不動産の資産価値、将来的な収益性や実現可能性への影響といった、事業参加者等が投資判断を行う上で重要となる事項が何ら説明されておらず、土地の資産性に大きく影響を及ぼすことの説明としては十分な説明を果たしているとは認め難い。この状態のまま当該商品の販売を行うことは、不動産特定共同事業に関し、その公正を害する行為であり、法第34条第1項第2号及び法第35条第1項第1号(=業務停止処分事由)に該当する。

    (3)工事完了時の形状・構造の説明が不足していた

    • 契約成立前交付書面において、「工事完了時の形状・構造等」について十分記載しておらず、少なくとも対象不動産に接する道路の構造及び幅員の記載が不足していた。このことは、法第24条第1項に違反する。また不動産特定共同事業に関し、その公正を害する行為であり、法第34条第1項第2号に該当する。

    公正を害する行為(法第34条第1項第2号)

    今回の処分においては、指示の対象となる行為のうち法第34条第1項第2号の「業務に関し、その公正を害する行為をしたとき、又はその公正を害するおそれが大であるとき」に該当することを処分の理由としています。

    「逐条解説不動産特定共同事業法第2版」(松本岳人・山辺紘太郎・宮城栄司)によると、「公正を害する行為」とは、業務に関する規制に違反するとまではいえない行為であっても、公正さを損なう行為が含まれるとされており、また「公正を害するおそれが大であるとき」とは、公正さを損なう具体的危険が十分に認められる場合とされています。

    上記で指摘されている事実関係は、いずれも軽微な違反・形式的な不備と言えなくもありませんが、これらが「公正を害する行為」あるいは「公正を害するおそれが大である」と判断され、業務停止を含む重い処分に至ったと思われます。

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