空き家等に係る媒介報酬規制の見直し

令和6年(2024年)7月1日に、宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額の上限を定める告示が改正されました。

今回の改正では、深刻化する空き家問題への対応の一環として、「低廉な空家等の売買又は交換の媒介/代理における特例」と「長期の空家等の貸借の媒介/代理における特例」の2つが新たに設けられました。

低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例

低廉な空家等(売買に係る代金の額(当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする。)又は交換に係る宅地若しくは建物の価額(当該交換に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。)が800万円以下の宅地又は建物をいう。)の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受ける報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)については、宅地建物取引業者は、第二の規定(※通常の売買・交換の媒介に係る報酬規定のこと)にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して、第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができる。この場合において、当該依頼者から受ける報酬の額は30万円の1.1倍に相当する金額を超えてはならない。

同時に改正された「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(以下「解釈・運用」といいます。)では、以下のとおり記載されています。

  • 「低廉な空家等」とは、売買に係る代金の額又は交換に係る宅地又は建物の価額が800万円以下の金額の宅地又は建物をいい、当該宅地又は建物の使用の状態を問わない。
  • この規定に基づき宅地建物取引業者が受けることのできる報酬は、空家等の売主又は交換を行う者である依頼者から受けるものに限られ、当該空家等の買主又は交換の相手方から受ける報酬については、告示第二の計算方法による。
  • 「当該媒介に要する費用」とは、人件費等を含むものであり、「費用を勘案して」とは、報酬額の算出に当たって、取引の態様や難易度等に応じて当該媒介業務に要すると見込まれる費用の水準や多寡を考慮することを求めるものであって、当該費用に相当する金額を上回る報酬を受けることを禁ずる趣旨のものではない。
  • 宅地建物取引業者は、この規定に基づき告示第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受ける場合には、媒介契約の締結に際しあらかじめ、この規定に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があることに、特に留意すること。

低廉な空家等の売買又は交換の代理における特例

低廉な空家等の売買又は交換の代理については、宅地建物取引業者が依頼者から受けることのできる報酬の額(当該代理に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)は、第三の規定(※通常の売買・交換の代理に係る報酬規定のこと)にかかわらず、第七の規定(※上記低廉な空家等の売買・交換の媒介に係る報酬規定のこと)により算出した金額の2倍以内とする。ただし、宅地建物取引業者が当該売買又は交換の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が第七の規定により算出した金額の2倍を超えてはならない。

(解釈・運用)

  • 宅地建物取引業者は、この規定に基づき報酬を受ける場合には、代理契約の締結に際しあらかじめ、この規定に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があることに、特に留意すること。 

長期の空家等の貸借の媒介における特例

長期の空家等(現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されておらず、又は将来にわたり居住の用、事業の用その他の用途に供される見込みがない宅地又は建物をいう。以下同じ。)の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受ける報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額については、宅地建物取引業者は、第四の規定(※通常の貸借の媒介に係る報酬規定のこと)にかかわらず、当該長期の空家等の借主である依頼者から受ける報酬の額が当該長期の空家等の借賃の1月分の1.1倍(居住用の用に供する長期の空家等にあっては、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該借主である依頼者の承諾を得ている場合を除き、0.55倍)に相当する金額以内である場合に限り、当該媒介に要する費用を勘案して、第四の規定により算出した金額を超えて、当該長期の空家等の借賃の1月分の2.2倍に相当する金額を超えない範囲内で報酬を受けることができる。

(解釈・運用)

  • この規定は、宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して受けることのできる報酬額の特例として、長期の空家等の貸借の媒介については、告示第四の規定にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して、告示第四の規定により算出した金額を超えて、依頼者の双方から受ける報酬の額の合計額が借賃の1月分の2.2倍に相当する金額を超えない範囲内で報酬を受けることができることを定めているものである。
  • また、この規定は、長期の空家等の借主である依頼者から受ける報酬の額が、告示第四の規定による通常の上限の範囲内(借賃の1月分の1.1倍(居住用にあっては、媒介の依頼を受けるに当たって当該借主である依頼者の承諾を得ている場合を除き、0.55倍)に相当する金額以内)である場合に限り、適用されるものであることから、この規定に基づき宅地建物取引業者が通常の上限を超えて依頼者から受けることのできる報酬は、長期の空家等の貸主である依頼者から受けるものに限られる。
  • 「長期の空家等」とは、宅地建物取引業者が貸主である依頼者から媒介の依頼を受ける時点において「現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されていないこと」又は「将来にわたり居住の用、事業の用その他の用途に供される見込みがないこと」のいずれかに該当する宅地又は建物をいい、例えば、前者については、少なくとも1年を超えるような期間にわたり居住者が不在となっている戸建の空き家や分譲マンションの空き室、後者については、相続等により利用されなくなった直後の戸建の空き家や分譲マンションの空き室であって今後も所有者等による利用が見込まれないものなどが考えられる。なお、入居者の募集を行っている賃貸集合住宅の空き室については、事業の用に供されているものと解されることから、長期の空家等には該当しない。
  • 宅地建物取引業者は、この規定に基づき告示第四の規定により算出した金額を超えて報酬を受ける場合には、媒介契約の締結に際しあらかじめ、この規定に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があることに、特に留意すること。

長期の空家等の貸借の代理における特例

長期の空家等の貸借の代理については、次に掲げる報酬の額(第2号にあっては、その合計額)は、第五の規定(※通常の貸借の代理に係る報酬規定のこと)にかかわらず、当該長期の空家等の借賃の1月分の2.2倍に相当する金額以内とする。
①宅地建物取引業者が当該長期の空家等の貸主である依頼者から受けることのできる報酬の額(当該代理に係る消費税等相当額を含む。次号において同じ。)(当該貸借の相手方から報酬を受ける場合を除く。)
②宅地建物取引業者が当該代理に係る貸借の相手方から報酬を受ける場合におけるその報酬の額と代理の依頼者から受けることのできる報酬の額の合計額(当該長期の空家等の借主である依頼者から受ける報酬の合計額が当該長期の空家等の借賃の1月分の1.1倍に相当する金額以内である場合に限る。)

(解釈・運用)

  • この規定は、宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の代理に関して受けることのできる報酬額の特例として、長期の空家等の貸借の代理については、告示第五の規定にかかわらず、次のとおり報酬を受けることができることを定めているものである。
  • 長期の空家等の貸主である依頼者から、借賃の1月分の2.2倍に相当する金額を超えない範囲内で報酬を受けることができること(当該貸借の相手方である借主から報酬を受ける場合を除く。)。なお、長期の空家等の借主である依頼者から受ける報酬については、告示第五の規定により、借賃の1月分の1.1倍に相当する金額を超えてはならない。
  • 当該代理に係る貸借の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が借賃の1月分の2.2倍に相当する金額を超えない範囲内で報酬を受けることができること。この規定は、長期の空家等の借主である依頼者から受ける報酬については、その額が告示第五の規定による通常の上限の範囲内(借賃の1月分の1.1倍に相当する金額以内)である場合に限り、適用されるものである。なお、当該代理に係る貸借の相手方である借主から媒介に関して報酬を受ける場合、その額は借賃の1月分の1.1倍(居住用にあっては、媒介の依頼を受けるに当たって当該借主の承諾を得ている場合を除き、0.55倍)に相当する金額以内である必要がある。
  • 宅地建物取引業者は、この規定に基づき報酬を受ける場合には、代理契約の締結に際しあらかじめ、この規定に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があることに、特に留意すること。

今回の改正により、宅地建物取引業者が低廉な空家等/長期の空家等の取引に携わりやすくなることが期待されます。

一方で、空家等の所有者や購入・賃借しようとする方々にとっては負担増となる側面があることは否めません。

報酬規制の見直しだけで空家等の問題の全てを解決することはできませんので、今後も様々な取り組みが求められます。

 

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