民法改正による不動産取引への影響(6)瑕疵担保責任

現行法では、売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき、善意・無過失の買主は、売主に対して損害賠償を請求することができ、さらに瑕疵の存在によって契約をした目的を達することができない場合には契約を解除することができる、としています(民法第570条、第566条)。
 
「隠れた瑕疵」とは、買主が取引上一般に要求される注意をしても発見することができない瑕疵(キズ、不具合等)をいい、物理的な瑕疵のみならず、法律的な瑕疵も含むものとされています。
 
今回の改正では、隠れた瑕疵という言葉を「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合」に変更するとともに、買主が取り得る手段として(1)履行の追完の請求、(2)代金の減額の請求、(3)損害賠償の請求、(4)契約の解除、の4つを用意しています。
 
現行法が損害賠償と契約解除しかできなかったのに対して、履行の追完(目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡し)と代金減額も請求することができるという点が大きな違いです。
 
 
【現行】
(売主の瑕疵担保責任)
第570条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
 
(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第566条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
【改正案】
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第566条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
 
 
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