金融商品取引法の改正と第二種金融商品取引業者の対応

金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成26年法律第44号)が、平成27年5月29日(金)に施行されることが発表されました。
 
不動産信託受益権を取り扱う第二種金融商品取引業者に影響があるのは、「登録拒否事由」として以下の事項が追加されたことが挙げられます(金融商品取引法第29条の4第1項第4号ニ)。
 
協会(認可金融商品取引業協会又は第78条第2項に規定する認定金融商品取引業協会をいい、登録申請者が行おうとする業務を行う者を主要な協会員又は会員とするものに限る。以下この号及び第33条の5第1項第4号において同じ。)に加入しない者であって、協会の定款その他の規則(有価証券の売買その他の取引若しくは第33条第3項に規定するデリバティブ取引等を公正かつ円滑にすること又は投資者の保護に関するものに限る。)に準ずる内容の社内規則(当該者又はその役員若しくは使用人が遵守すべき規則をいう。)を作成していないもの又は当該社内規則を遵守するための体制を整備していないもの
 
つまり、(1)協会に加入するか、(2)協会のルールに準じた社内規則を作成して且つ社内規程を遵守する体制を整備する、のいずれかの対応をしなければいけないということです。
 
これは新規に登録する会社だけではなく、既に第二種金融商品取引業の登録を受けている会社についても同じであり、施行日までに対応することが求められます。
 
協会への加入を促進するというのが今回の改正のポイントの一つですが、協会への加入自体はあくまでも任意であり、加入しないで独自の対応をすることも可能です。
 
ただ、協会に加入する場合には協会のサポートを受けながら体制整備を進めていけば良いわけですが、協会に加入しない場合には自力で・独力で「協会に加入しているのと同等の体制」を整備しなければなりません。
 
体制整備をするうえで参考にすべきは、今回の改正法の施行と同時に改正される監督指針(金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針)です。
 
?−2−6 協会未加入業者に関する監督上の留意点
 
(1)主な着眼点
 
? 金融商品取引業協会に加入しない金融商品取引業者(個人である場合を除く。?−2−6において「協会未加入業者」という。)は、協会規則に準ずる内容の社内規則を適切に整備しているか。
? 社内規則の適正な遵守を確保するための態勢整備(役職員への周知、従業員に対する研修等やその遵守状況の検証など)が図られているか。
? 協会規則に改正等があった場合には、それに応じて直ちに社内規則の見直しを行うこととしているか。 
 
(2)監督手法・対応 
 
協会未加入業者の社内規則の策定・改正・遵守状況等に関して問題が認められる場合には、深度あるヒアリングや、必要に応じて金商法第 56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、金融商品取引業者における自主的な改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。さらに、報告徴求の結果、協会規則に準ずる内容の社内規則を作成していると認められない場合又は当該社内規則を遵守するための体制を整備していないと認められる場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。
 
協会で定めるルールを参考に社内規則を作成すること自体は、さほど難しいことではないと思います(不動産の業界団体等から雛型が提示されていますので、それらを参考にすれば良いでしょう)。
 
しかし、社内規則を作成するだけでなく、社内規則の適正な遵守を確保するための態勢を整備することも求められています。
 
具体的には、作成した社内規則を役職員への配布する、従業員に対する研修を行う(1回やれば良いということではなく継続的に行うことが必要)、遵守状況の検証(コンプライアンス部門でのチェックや内部監査)等を行うことが挙げられます。
 
さらには、協会規則に改正等があった場合には、それに応じて直ちに社内規則の見直しを行わなければなりませんので、継続的に情報収集を行うことも必要となります。
 
 
なお、今回の改正によって、金融商品取引業者に業務を的確に遂行するための業務管理体制の整備が新たに義務付けられ、体制を整備をしなければ登録拒否事由に該当することになりますので、あわせてご留意ください(金融商品取引法第33条の3、金融商品取引業等に関する内閣府令第70条の2第1項、金融商品取引法第29条の4第1項第1号ヘ)。
 
金融商品取引法
(業務管理体制の整備)
第35条の3  金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業又は登録金融機関業務を適確に遂行するため、内閣府令で定めるところにより、業務管理体制を整備しなければならない。
 
 
金融商品取引業等に関する内閣府令
(業務管理体制の整備)
第70条の2 法第35条の3の規定により金融商品取引業者等が整備しなければならない業務管理体制は、金融商品取引業等を適確に遂行するための社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいう。)を整備し、当該社内規則等を遵守するための従業員に対する研修その他の措置がとられていることとする。
(第2項以下略)
 
ページトップへ