不動産会社を介さない不動産売買(個人間売買)
不動産の売買を行う場合、一般的には不動産会社(仲介業者)に依頼することが多いかと思います。
しかし、不動産会社を介さずに不動産の売買を行うことは法律上問題はなく(※)、最近は親族間等に限らず、売主・買主が直接取引を行うことが少なくありません。
※宅地・建物の売買あるいは売買・賃貸の媒介(仲介)を、不特定多数の人を相手方として反復・継続して行う場合には、宅地建物取引業の免許が必要です。
個人間で不動産売買を行う場合の注意点を幾つか挙げておきます。
(1)本人確認
高額であるが故、不動産取引を利用した詐欺事件が後を絶ちません。親族や知人でない相手方と取引を行う場合には、相手方の素性等を慎重に確認することが大切です。
また、たとえ親族や知人であったとしても、代理人取引には気を付けてください。本人に無断で取引をしてトラブルとなるケースも少なくありませんので、必ず本人の意思を直接確認するようにしましょう。
(2)法令上の制限
土地利用や建築については、各種法令によって様々な制限が課せられており、現在その土地の上に建物が建っているからといって、必ずしも同規模の建て替えができるとは限りません。せっかく高いお金を払って不動産を手に入れたとしても、購入の目的を実現することができなければ意味がありませんから、購入前にきちんと調べておかなければなりません。
不動産会社が仲介に入る場合であれば、不動産会社が対象不動産の権利関係や法令上の制限について調査を行い、取引主任者による「重要事項説明」を行ってくれます。しかし、不動産会社が介在しない場合には、買主が自ら調べる必要があります。調査を怠ったことによる損害は買主が負わなければならず、まさに自己責任ということになります。
(3)契約書
「親族どうし(知人どうし)だから、契約書なんて要らないよ」と仰る方がいらっしゃいます。「親族(知人)だからトラブルになることはない」という思いからかもしれませんが、取引をきっかけに親族(知人)間に深刻な争いが生じることは決して稀なことではありません。
むしろ、親族(知人)との大事な絆を失わないためにも、取引内容を明確にした契約書を作成すべきだと思います。
なお、市販の契約書やインターネットで公開されているサンプルをそのまま使用することはお薦めできません。不動産は極めて個別性が強く、また取引の経緯によって契約書に定めるべきことや定め方が異なってきますので、そういったことを適切に反映しない契約書を用いることは、却ってトラブルにつながりかねないからです。
不動産会社を介さない個人間売買のメリットは、何と言っても仲介手数料が不要になるということです。仲介手数料の上限は「売買代金の3%+6万円+消費税」ですから、その金額は何十万円、何百万円となり、決して小さな差ではないですよね。
とはいえ、不動産は高額ですし、土地利用や建築に関する規制も複雑になっていますので、専門家のサポートを受ける等、細心の注意を払って慎重に取引を行うべきでしょう。