媒介契約と指定流通機構

 宅地建物取引業者が、宅地または建物の売買・交換の媒介(仲介)の依頼を受ける場合、次のいずれかの契約類型によることになります。

  (1)一般媒介契約
(2)専任媒介契約
(3)専属専任媒介契約

一般媒介契約とは、依頼者が何社の宅地建物取引業者に依頼してもよいというものです。これに対して、専任媒介契約及び専属専任媒介契約は、その宅地建物取引業者にしか依頼できないとするものです。

(ちなみに、「専任」と「専属専任」の違いは、後者の場合依頼者が自ら売買の相手方を見つけた場合(自己発見取引)であっても、当該宅地建物取引業者を通さないと取引ができないという点にあります。)

ところで、専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結した場合、宅地建物取引業者は対象物件の情報を指定流通機構に登録しなければならないとされています。指定流通機構というのは、宅地建物取引業者間で物件情報を共有化するためのシステムで、レインズ(REINS)と呼ばれています。

指定流通機構への登録が義務付けられているのは、物件の売却依頼を受けた業者が「両手」(売主・買主とも自社の顧客となり、両方から仲介手数料を受領すること)を狙って、情報を自社内で囲いこむといった弊害を防ごうという趣旨であると考えられます。

しかし、売主の中には、あまり情報を表に出さずに売却活動をして欲しいという希望を持っている人もいます。そのために信頼できる業者一社のみに媒介を依頼したいところ、専任媒介契約とすると指定流通機構に登録しなければならなくなるという矛盾が生じてしまうことがあるのです。そのため、形式上は一般媒介契約としつつ、お互いの信頼関係をベースに、実際には一社のみにしか依頼しないということもよく行われています。

広範囲に情報を公開したほうが、より良い条件の買い手をより早く見つけることができる、という仮説に基づいて指定流通機構の制度は作られています。一方で、同じものが世の中に二つと存在しない不動産の商品特性を考えたとき、果たしてその仮説は正しいといえるでしょうか。

情報過多の世の中なので、情報発信のあり方を改めて吟味すべきだと思います。先に述べた両手狙いの弊害も防止すべきであるのは確かですが、かといって、なんでもかんでもオープンにすることが依頼者の利益につながるとは思えませんので、そのバランスをとる方法を検討すべきだろうと思います。

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