定期借家契約の「事前説明書面交付義務」
借地借家法においては、賃貸人に正当事由がない限り、賃貸借契約の更新を拒絶することができないというのが原則です。
しかし、公正証書等の書面によって、契約の更新のない建物賃貸借契約、いわゆる「定期借家契約」を締結することも可能です。
この定期借家契約ですが、以前に比べるとだいぶ利用されるようになったとはいえ、全面的に普及したとはいえないと思います。
不動産賃貸経営のリスクマネジメントの視点からすると、大家さんはもっと積極的に定期借家契約を活用すべきではないかと考えています。
定期借家契約制度を利用するにあたって注意すべきことがいくつかあります。
そのうちの一つが「賃貸人による事前説明義務」です。
定期借家契約を締結する場合には、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、「この建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了する」ことについて、その旨を記載した書面を交付して説明する必要があります。
もし、この説明を怠ったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは無効となる、すなわち通常の賃貸借になってしまいますので注意してください。
また、単に口頭で説明するのでは足りず、必ず書面を交付する必要があります。
賃借人と明け渡しに関して争いが生じた場合に、この事前説明の書面を交付したかどうかが争点となる可能性がありますので、「説明書面を受領しました」旨を記載したうえで賃借人の署名押印を徴求しておくことも重要です。