TMKへの譲渡人の告知義務

特定目的会社(TMK)で物件を購入する場合、売買契約書に以下の条項を盛り込む必要があります。

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第●条(告知義務)
売主は、資産の流動化に関する法律(平成10年6月15日法律第105号)第199条に規定される重要な事項(有価証券届出書等(証券取引法(昭和23年法律第25号。その後の改正を含む。)第2条第7項に規定する有価証券届出書その他資産の流動化に関する法律施行規則(平成12年総理府令第128号。その後の改正を含む)第89条において規定する書類をいう。)に記載すべき重要な事項)について知った場合には、遅滞なくその旨を買主に書面により告知するものとする。
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これは、資産の流動化に関する法律の規定(第199条)に基づくものであり、このような条項を盛り込んでいないとTMKで物件を購入することはできません。

実際、金融庁のホームページで公表されている事務ガイドラインの中でも、チェックリストの中で「特定資産譲受契約書に、譲渡人が当該資産に係る資産対応証券に係る有価証券届出書等に記載すべき重要な事項について譲受人たるSPCに告知する義務を有する旨の記載があるか」との記載があり、売買契約書に上記の条項が盛り込まれていない場合には、業務開始届書が受理されないことになります。

しかし、売主(オリジネーター)にこの条項を入れることを求めると、必ずと言ってよいほど「当該特定資産に係る資産対応証券に関する有価証券届出書等に記載すべき重要な事項」について問い合わせを受けるのですが、これについて明確な規定が無いのが実情であり、説明に苦慮することがしばしばあります。

金融商品取引法では、企業内容等を開示させて投資家の保護を図る目的で、株式や社債等当該有価証券の発行主体に対し、有価証券届出書を作成して財務局へ提出すること、さらに投資家に対して目論見書を交付することを義務付けています。

優先出資や特定社債によって投資家から資金を調達するTMKにも当然この義務があります。

しかしながら、TMKというのは単なる「器」に過ぎないため、有価証券届出書や目論見書に記載すべき事項を能動的に調査することは期待できません。

そのため、TMKが取得する物件の内容を最も把握している売主に情報を提供してもらい、それを有価証券届出書等の記載へ反映させようというのが法の趣旨です。

どのような事柄について告知する義務を負うのかを具体的に挙げるのは困難なのですが、土壌汚染等の物理的な瑕疵、他人の権利の存在等の法律的な瑕疵、あるいは第三者からの苦情・クレーム等が考えられます。

これらについて、売主が「知ったとき」には、買主であるTMKへ告知しなければならないということです。

これらの事柄については、売買契約書の容認事項や重要事項説明書に記載されているのが通例ですので、売買契約書に告知義務の条項を加えたとしても、売主に通常の売買以上の負担を強いることにはならないと思います。

もちろん、契約締結時にTMKへ告知しなかった事実を後日知った場合には告知する必要がありますが、決済前であればともかく、決済後にそのようなことはあまり考えにくいでしょう。

なお、この規定は売主に情報提供の義務を課すだけであって、瑕疵担保責任や表明保証とは別次元の話です。

したがって、売買契約書で売主の瑕疵担保責任を免除している場合には、瑕疵について売主が責任を問われることはありません。

(もっとも、瑕疵担保責任に関しては、売主がその瑕疵の存在を知りながら買主に告げなかった場合には、たとえ売買契約書で売主の免除を規定していても無効になります。)

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