第二種金融商品取引業者様: 「社内記録」の重要性
コンプライアンス態勢の構築を考えるうえで重要なキーワードとなるのが「社内記録」です。
法律に定められた義務を履行しているか、社内規程に定められたフローどおりに業務を行っているか、というようなことを第三者(主に当局)に対して明らかにするためには、単に契約書や契約締結前交付書面(重要事項説明書)等を保管しているだけでは足りません。
そのため、自らの業務の行跡(ぎょうせき)を外部の第三者にも理解できるような形で記録しておくこと…社内記録の整備…が重要となります。
不動産信託受益権の売買の媒介を行う第二種金融商品取引業者の場合、「顧客への対応が適切に行われているか」ということを後から検証できるような記録を残しておく必要があると考えます。
具体的にどのような内容・形で記録に残すべきかについては、それぞれの業者の組織体制や取扱商品・顧客属性等によって異なってきますが、以下に例を挙げてみます。
(1)顧客の氏名(商号)及び住所(所在)
犯罪収益移転防止法に基づく本人確認を行うこととも当然必要ですが、下記(2)(3)を確認する前提として把握する必要があります。
(2)特定投資家か一般投資家か
金融商品取引法では、投資家をプロ(特定投資家)とアマ(一般投資家)に区分して、前者に対する金融商品取引業者の行為規制を緩和しています。
このため、顧客が特定投資家・一般投資家のいずれに該当するかを確認する必要があります。
また、特定投資家のうち一定の者については一般投資家へ移行する旨を申し出ることが可能とされており、金融商品取引業者はこのような特定投資家に対して移行申出が可能である旨を告知する義務を負っています。
そのうえで、移行申出がなされた場合には、一定の書面を予め交付することも義務付けられています。
これらの対応が適切に行われているかについても、記録として残しておくべきでしょう。
(3)顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的
金融商品取引法においては、「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的」に照らして不適当と認められる勧誘をしてはならないという「適合性の原則」が定められています。
このため、当該顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的を把握していることが前提となります。
金融商品取引業者としては、これらの記録を担当者任せにするのではなく、フォーマット(顧客カード)を統一したうえで一元管理することが望ましいと思います。
また、こうした記録作成というのは面倒だという意識が働くため、ついつい後回し、さらには失念してしまう危険性があります。
そのようなことが起きないためにも、記録(顧客カード)を作成しないと次のプロセスに進めないといったような形で業務フローに組み込み、記録作成を徹底させる仕組みを作ることも大切だと思います。