信託受益権売買について (2)信託が活用されている理由

不動産ファンドでは、不動産そのものを直接保有するのではなく、信託受益権の形で保有することが多いと言われています。

信託が用いられる理由は幾つかありますが、主なものは次のとおりです。

(1)流通課税の軽減

 不動産の売買を行う場合には、所有権移転登記に係る登録免許税と不動産取得税が課せられますが、大形物件であるとそれだけで数百万、数千万円にもなってしまいます。これに対して信託受益権の売買の場合には、これらの流通課税が大幅に軽減されており、信託銀行に対する報酬を考慮しても有利であることが多いのです。

(2)不動産特定共同事業法の適用回避

 不動産への共同投資を行う場合、原則として不動産特定共同事業法が適用されますが、許可要件が厳しいため、ファンドにとっては利用しずらいと言われています。これに対して、不動産を信託受益権化した場合には同法の適用はないため、比較的柔軟にファンドを組成を行うことができるメリットがあります。

(3)担保設定の容易さ

 不動産に担保を設定する場合には「抵当権」を設定することになりますが、この場合には、対象となる土地・建物一つひとつに抵当権設定登記を行う必要があり、手間と費用(債権額に応じた登録免許税)がかかります。これに対して、信託受益権への担保設定は「質権」の設定によって行うことになりますが、受託者への通知・受託者からの承諾だけで済むため、手間も費用も殆どかかりません。

(4)その他

 信託銀行が受託をするにあたってデューデリジェンスを実施しているため、信託受益権になっているということは物件に問題が無いという証左であり、投資家にとって安心材料の一つになります。

このような理由から、不動産ファンドが信託を活用するようになり、その結果大型・中型物件の多くが信託受益権化されました。

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